時実新子さんが1ヶ月前の3月10日に亡くなっていたということを、昨日ラジオで聞いてはじめて知った。
奔放な句を読み、その情熱的な作風から「川柳界の与謝野晶子」とも呼ばれた時実新子さん。
私が時実新子さんを知ったのは「川柳新子座」という本に出会って以来で、20年近く前のことになる。
ベストセラーとなった「有夫恋(ゆうふれん)」には情熱的な句が並ぶ。
妻をころしてゆらりゆらりと訪ね来よ
よその男と命の芯を見つめ合う
ほんとうに刺すからそこに立たないで
手が好きでやがて全てが好きになる
雨の日のダイヤル通じそうで切る
別れたらチロリン村に行くつもり
ビール缶ぺこんと暮らし荒れてゆく
その一方で
母になるその日初めて雪が降り
子を庇うとき一匹の獣たり
まっすぐに子をみつめる日涙なし
つなぐ手の母なり子なりすべてなり
などといった句も詠んでいる。
時実新子さんは、「川柳新子座」など様々な柳壇で選者をつとめ抜群の選句力、鑑賞力で現代川柳の魅力と深さを伝え、すそ野を大きく広げた人だ。
知らなかった、時実新子さんが亡くなっていたなんて。
残念としか言いようがない。
せめて月命日となる今日、御冥福を祈るのみだ。