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茨木のり子さんの詩
 2月19日、詩人の茨木のり子さんが亡くなっていたことが報道されていた。茨木のり子さんといえば、若い頃から私が大切にしてきた詩がある。
 二十歳前後であったと思うが、何かの冊子に掲載されていた詩で、「汲む」という詩。
 後に出版された茨木のり子さんの詩集の中の詩とは若干違っていたが、私は二十歳前後にめぐりあったこの詩を今でも大切に思っている。
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大人になるというのは
すれっからしになることだと思いこんでいた少女の頃
立ち居ふるまいの美しい発音の正確な素敵なひとに会いました。
その人は私の心を見透かしたように何気ない話に言いました。
初々しさが大切なの。
人に対しても世の中に対しても。
人を人とも思わなくなったとき堕落が始まるのね。
堕ちてゆくのを隠そうとしても隠せなくなった人を何人も見ました。
私はどきんとし、そして深く悟りました。
年老いても咲きたての薔薇のように
みずみずしく世界に向かって開かれてあるのは
きっと難しいことに違いない。
でも、それなくては、たとえ どんな仕事でも 豊かに着実に実らせることはできないのだろう。
あの人が お下げ髪の私に伝えた大切な言葉。
私も かつてのあの人と同じくらいの年になりました。
泉の水を汲むように、
いまもときどき静かにその意味を汲むことがあるのです。
by goshouraku | 2006-03-01 10:24 | 読書


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